数的優位で生まれるWTBのトライ

序盤の18試合でトライ発生のメカニズムを分析

【東京・10月3日】2019年ワールド杯での最初の18試合を分析してみると、WTBによるトライは合計で18。近代ラグビーでバックスリーと呼ばれるFBを加えたトリオのトライ数は37となっている。ボールを外に大きく回すことがトライにつながっていることを示している。

FWがピッチ中央付近での数フェーズの攻撃で相手ディフェンスを引き付けると外側の守りが薄くなり、攻撃側が防御側に対して数的有利な状態が生まれる。また、組織立ったディフェンスはブレークダウン周辺に集中するので、ワイド・オープンな攻撃には対応できない。

攻撃側が防衛側よりも数的有利な状態をオーバーラップという。オーバーラップを最も有効に生かすにはボールをワイド・オープンに展開することだ。

防御側がこうした状況に対応するひとつの方法は、攻撃側により多くパスをさせることだ。パスが多くなればなるほど、攻撃側がボールを落とす可能性が増えるので、防御側はバックスリーへの注意を弱める余裕が生まれる。攻撃側としてはバックスリーをカバーするディフェンスが整う前に、ボールを素早くワイドに展開する必要がある。

次のビデオを見てみると、日本の攻撃は5名、アイルランドは6名いるのでオーバーラップは形成されていない。しかし、アイルランドのディフェンスは選手間の距離が非常に狭く、中央に集まり過ぎているので、数的有利を活用できおらず、WTBの福岡堅樹の前にはディフェンダーが誰もいない。

日本の作戦ではディフェンダーが福岡の前に来るまでにボールを彼に回すことだ。このため、CTB中村亮土から松島幸太朗への頭越しのミスパスが、外側から2番目いたラファエル・ティモシーに直接渡った。ここで日本はラファエロと福岡の2人に対してロブ・カーニー1人というオーバーラップが形成された。日本はボールを大きく外に展開してアイルランドのディフェンダーを振り切り、福岡がタックルを受けずにトライを挙げた。

アイルランド戦での日本は相手ディフェンスの間を抜く必要はなく、ボールを大きく外に展開するだけで防御側を置き去りにした。 

ボールをワイドに展開してもオーバーラップを作れなければ、なかなか得点はできない。オーバーラップ、狭いディフェンス、あるいは例外的な素晴らしいプレーがなければ、ボールは単に攻撃ライン両端の間を横に動くだけで、防御側は簡単に対応できる。タックルを受けた時にボールを受け取る選手が外側にいないので、ボールを奪われる可能性が高い。

ワイド・オープンのトライは、ピッチ中央付近でのFWの強い働きの結果だ。ディフェンダーを引き付け、WTBがワイドにトライするスペースを作るからだ。

ラグビーで「密猟者」と呼ばれるWTB。今回のW杯では彼らのトライがもっと見ることができるだろう。

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