RWC2019大会成功に「にわかファン」の存在、若年層選手の増加を歓迎

日本ラグビーフットボール協会は、昨年のラグビーワールドカップ2019についてのオンラインセミナーで大会分析を披露。大会成功に「にわかファン」と呼ばれる新たなファンや訪日客の存在が大きかったことが提示され、大会関係者はアジアや日本のファンとともに、国内の若年層競技者の増加を大会レガシーの一つとして歓迎した。

国内外から300人を超える参加者を集めたオンラインでの大会分析セミナーで、日本大会の経済波及効果が史上最高の6,464億円であったことが発表され、2018年の組織委員会の4,372億円としていた見積もりを大幅に上回る成果となった。
 大会効果として特に歓迎されたのが、小中学生など若い年代の競技者の増加だ。
アジア初の大会としてレガシープログラムのImpact Beyond 2019も日本のみならずアジア各地で展開された。参加者は日本で118万人、アジア全体では225万人に上った。その中でも、日本国内の小学校では全国の35%にあたる6,616校でタグラグビー体験を実施。ラグビースクールでもラグビー体験会を行い、中学生までの約29,000人の子どもたちが競技を初めて体験した。
 この経験は、試合観戦などとともに新たな競技者の増加につながっていると見られている。日本協会の森重隆会長は、「小中学生の競技者数が目立って増えたという嬉しい報告を受けている」と指摘した。
同協会の資料によれば、2020年3月度の6歳以上12歳未満の選手登録は、前年度に比べてラグビースクールで2,700人近くの上昇を示し、12歳から15歳までも約260人増となっている。
 森会長は、「今後も子供たちが地域でラグビーを続けることができる環境を整備すること、誰でもいつでも参加できる開かれたラグビーであり続けることが、地域に根付いて競技者を増やすために重要と考えている」と語った。

75%を占めた新たなファン

チケット販売率は45試合で99%の約184万枚となり、大会史上最高を記録したが、これに大きく貢献したのが「にわかファン」と呼ばれた新しいラグビーファンの存在だった。
国内の観戦者に対するアンケート調査によれば、ラグビー観戦になじみのあるコアなファンに対して、「にわかファン」は女性の比率が高く、全体では「ラグビーを観戦したことがない」や「過去に何度か観たことがある程度」という、非コアの新たなファンが75%を占めた。
 初のベスト8入りを達成した日本代表だが、日本戦は限られた試合数であることから、多くの人が「日本代表戦以外の試合にラグビーの価値を見出して」観戦に足を運んだことがうかがえると、EYアドバイザリー&コンサルティング社は分析している。
アンケートのチケット購入動機でも、コアファン、非コアファンともに「迫力ある最高のプレーを生でみたい」、「RWCをスタジアム観戦できるのは一生に一度かもしれない」とする回答が多かった。
 非コアファンの観戦のきっかけでは「日本代表を応援したい」が最も多かったが、大会の情報をメディアで接したり、「周囲の盛り上がりを見て」というものも少なくなかった。これらのファン層が年明けから大会開幕までの間にチケットを購入。好調だったチケット販売を後押しする形になったと考えられている。
 ワールドラグビーのアラン・ギルピン大会統括責任者は、「あの素晴らしい6週間の開催でラグビーは日本人の心をつかみ、熱狂的なファンが日本を訪れた。新しいファンは競技に心を奪われ、若者のラグビー人口は過去最高を記録した。大会はすべての面において成功した」と語り、「忘れられない大会になった」として関係者をはじめ、日本の人々への感謝を述べた。
また、1995年南アフリカ大会でネルソン・マンデラ大統領(当時)が優勝した南アフリカ代表のフランソワ・ピナール主将にウェッブ・エリスカップを手渡したことに触れて、「ラグビーワールドカップのパワーが国を一つにし、社会や数百万人の人々を動かした。それは今回のレポートからも感じられる」と話した。
そして、「日本とワールドラグビーにとって重要なのは、ラグビーワールドカップのレガシーと精神が生き続けること。すべての人にラグビーの門戸を開いて、若いファンやにわかファンを引き付けていかなければならない」と続けた。

国際スポーツの良さを再認識

経済効果ではインバウンドの訪日客の存在が大きく、訪日客の消費がもたらした効果は全体の半分以上にあたる3,482億円と算出された。
ラグビーワールドカップ特有の44日間という夏季オリンピック大会(17日)やFIFAワールドカップ(32日)よりも長い開催の間に、試合間隔に合わせて訪日客の滞在傾向も長期となり、一人あたり平均16泊で686,117円(1泊当たりでは42,644円)を消費。これは開催前年2018年の訪日客と比較すると滞在で2.7倍、消費では4.6倍にあたり、宿泊数と一人あたりの消費で大会前の見込みを大きく上回り、スタジアム改修などのインフラ整備、大会運営費などと合わせて、高い経済効果の要因になったと分析された。
2019年大会の組織委員会事務総長を務めた嶋津昭氏は、「この分析レポートを見れば、国際スポーツ大会がいかに経済を活性化させ、国民人々を勇気づけ、元気にするかを理解してもらえるのではないか。国際スポーツの良さを再認識していただき、これが来年に予定されている、世界中のアスリートと人々が期待する東京オリンピック・パラリンピックの成功につながることを強く信じている」と述べた。
 ラグビーワールドカップ2019日本大会は昨年9月20日に開幕し、11月2日の決勝でイングランドを破った南アフリカの優勝で幕を閉じた。